COLUMN
皮膚科
公開日
2026.7.4
更新日
2026.7.3
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹(しっしん)が、良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性的な皮膚疾患です。
この病気の背景には、
皮膚のバリア機能が低下しやすいこと
遺伝的にアレルギーになりやすい体質(アトピー素因)
が関わっていると考えられています。
①皮膚のバリア機能が低下しやすいこと
健康な皮膚には、外からの刺激や異物の侵入を防ぎ、体内の水分を保持するバリア機能が備わっています。
ところがアトピー性皮膚炎では、肌のうるおいやバリア機能を支える成分(フィラグリンなど)が不足しやすい状態です。
この背景には、生まれつきの体質だけでなく、皮膚の炎症によってこれらの成分が作られにくくなることも関係しています。
成分が不足した結果として、肌は水分を保ちにくくなり、乾燥が進むことでさらにバリア機能が低下しやすくなります。
②遺伝的にアレルギーを起こしやすい体質(アトピー素因)
アトピー性皮膚炎は、もともとの体質が関係していることもあります。
家族の中にアトピー性皮膚炎や、ぜんそく・アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患がある場合、発症しやすい傾向があります。
アトピー性皮膚炎そのものが、そのまま遺伝するわけではありません。皮膚のバリア機能や免疫反応の特徴など、アレルギーを起こしやすい体質が受け継がれやすいと考えられています。
このように、「バリア機能の低下」と「アレルギー体質」が重なることで、ダニや花粉などのアレルゲンや、汗などの刺激が入り込みやすくなります。
その結果、免疫が過剰に反応し、IgE(アイジーイー)抗体やサイトカインなどが関わる炎症反応が起きてしまうのです。かゆみや湿疹といった皮膚症状は、この炎症が起きることで生じます。
また、「かゆくて掻いてしまう↔バリアがさらに壊れて炎症が強まる」という悪循環に陥りやすいことも、アトピー性皮膚炎の特徴です。
※抗体:アレルゲンを認識する免疫物質のひとつ。アレルギー反応に関係します。
※サイトカイン:免疫細胞に情報を伝える物質。働きが強くなると炎症やかゆみに関係します。

代表的な症状には以下があります。
赤み
ブツブツした湿疹
乾燥・皮むけ
掻き傷
皮膚が厚く硬くなる
ジュクジュクした湿疹
多くの場合、症状は体の左右に対称的に現れます。また、年齢によって出やすい部位が変わるのも特徴です。
こうした変化には、皮膚の発達段階や、汗・摩擦・刺激の受けやすさなどが関係すると考えられています。
具体的には、乳児期は「顔や頭」、幼児期・学童期は「ひじ・ひざの内側(四肢の屈曲部)」、思春期・成人期は「顔や首・上半身」に出やすい傾向があります。なかでも四肢の屈曲部は、幼児期以降は年代が上がっても症状が出やすい部位です。
症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すのも、この病気の特徴のひとつです。

【アレルギーマーチとの関係】
乳幼児期のアトピー性皮膚炎と関連して、成長とともに食物アレルギー、気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎など、別のアレルギー疾患が現れることもあります。
このような経過を「アレルギーマーチ」と呼びます。
このアレルギーマーチには、近年注目されている「経皮感作(けいひかんさ)」という仕組みが関係すると考えられています。これは、バリア機能の低下した肌がアレルゲンの「入り口」となり、免疫が反応しやすくなる仕組みです。
そのため、乳幼児期から適切なスキンケアや治療を行い、皮膚のバリア機能を守ることが大切です。

アトピー性皮膚炎には「これさえあれば陽性」という決定的な一つの検査はありません。
医師は以下のポイントを中心に観察し、総合的に診断していきます。
かゆみの有無
湿疹の見た目や出ている場所
症状が続いている期間 など
ただし、症状の重さや悪化の原因を知るため、必要に応じて血液検査やアレルギー検査(パッチテストなど)を行う場合もあります。
アトピー性皮膚炎は、症状が慢性化・重症化すると治療に時間がかかることもあります。
そのため、症状が軽いうちから適切なケアを続け、悪化を防ぐことが重要です。
また、アトピー性皮膚炎は症状が落ち着いていても炎症が再燃しやすい性質があります。このことから、症状のない時期も治療を継続し、良い状態を維持していくことが大切です。
治療には、主に以下の3つがあります。
①薬物療法
薬物療法では、主に炎症を抑えるお薬を使用します。
軽症〜中等症では、ステロイド外用薬や非ステロイド系外用薬などの塗り薬が治療の中心です。
中等症〜重症では、塗り薬に加えて注射なども組み合わせながら、炎症をコントロールしていきます。
②スキンケア
保湿によって皮膚のバリア機能を補い、刺激を受けにくい皮膚状態を維持します。
③悪化因子への対策
汗、乾燥、ダニ・ほこり、摩擦、ストレスなど悪化につながる刺激を減らすことも治療の一部です。
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【参考文献】
日本皮膚科学会他 編: アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024, 日本皮膚科学会雑誌. 2024; 134(11): 2741-2843
日本皮膚科学会: 皮膚科Q&A アトピー性皮膚炎
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