COLUMN
皮膚科
公開日
2026.5.25
更新日
2026.5.31

こんにちは、北堀江LA皮膚科クリニック 院長の竹澤です。
「塗り薬をちゃんと続けているのに、なかなか良くならない」
「夜中もかゆみで何度も目が覚めてしまう」
本当につらいですよね。
中等症〜重症のアトピー性皮膚炎の方からは、こうしたお悩みをよくうかがいます。
今回は、塗り薬だけでは限界を感じている方に知っておいてほしい、全身療法と注射治療についてまとめました。
アトピー性皮膚炎の症状で悩まれている方は、ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。
アトピー性皮膚炎の治療は、段階を踏んで進めるのが基本です。
まずはスキンケア(保湿)と塗り薬(ステロイド外用薬やJAK阻害薬など)でしっかり炎症を抑え、症状をコントロールします。
これは軽症から重症まで、すべての方に共通する治療の基本です。
それでも症状が落ち着かない、強い症状を繰り返してしまう、広範囲に炎症が広がっているといった中等症〜重症の方の選択肢として検討されるのが、「全身療法」や「光線療法」です。
これらは塗り薬の代わりではなく、塗り薬を続けても良くならない方に「追加する」治療と考えるとわかりやすいでしょう。
新たな治療を始めたあとも、保湿やステロイド外用薬といった基本のケアは継続することが一般的です。

中等症〜重症のアトピー性皮膚炎での薬による治療には、
塗り薬を使った「外用療法」
飲み薬や注射薬などによって治療を行う「全身療法」
その他、薬を使わない「光線療法」
などがあります。
それぞれの特徴が異なるため、症状や年齢、生活スタイルに応じて選択することが大切です。
体の内側から免疫の働きを調整し、炎症を抑えるタイプのお薬です。代表的なものには以下があります。
JAK(ジャック)阻害薬 | 細胞の中で炎症の合図を伝える酵素の働きを抑えるはたらき。 |
ステロイド薬 | 症状が急に悪化したときや、症状が重い場合に、短期間だけ使用することがあります。 |
免疫抑制薬(シクロスポリン) | 免疫の過剰な働きを抑えるはたらき。強い炎症が体の広い範囲にみられるときに使用します。 |
アトピー性皮膚炎の炎症やかゆみに関わる特定の物質だけを狙って働きを抑えるタイプのお薬です。
生物学的製剤とは、バイオテクノロジーを用いて、生物から作り出された「タンパク質を有効成分とする薬」のことをいいます。アトピー性皮膚炎以外にも、リウマチ・ぜんそく・がんなど、様々な病気の治療で使われています。
生物学的製剤はタンパク質でできているため、口から飲むと胃や腸の消化酵素で分解されてしまいます。そのため現時点では飲み薬はなく、皮膚や血管に注射して使います。
特殊な波長の紫外線(ナローバンドUVB)を皮膚に照射することで、皮膚の炎症をやわらげる治療法です。薬を使わずに治療できる選択肢として、塗り薬で十分な効果が得られない方や、お薬の使用に抵抗がある方に検討されます。
アトピー性皮膚炎の炎症やかゆみには、免疫細胞そのものや、免疫細胞から放出される「サイトカイン」と呼ばれる物質が深く関わっています。
外からの刺激やアレルゲンに対して、サイトカインが「炎症を起こせ」「かゆみを出せ」「バリア機能を下げろ」といったメッセージを体に送ってしまうことで、様々な症状が現れるのです。
中でも、「インターロイキン」(略してIL、アイエル)と呼ばれるサイトカインはたくさんの種類があることが知られており、まるで背番号のように番号がつけられています。
アトピー性皮膚炎では主にIL-4、IL-13、IL-31などが、症状を起こす原因として知られています。
塗り薬としても処方されるステロイド薬や免疫抑制薬は、こうしたサイトカインを含む免疫機能全体をまとめて抑えるお薬です。
一方、注射薬はアトピー性皮膚炎の症状に強く関わるサイトカインをピンポイントで狙って抑える仕組みになっています。
そのため、体に必要な免疫の働きはなるべく残しつつ治療できて、炎症・かゆみの軽減、バリア機能の回復が期待できます。
現在、日本で保険適用となっているアトピー性皮膚炎の注射薬は、狙うサイトカインの違いによって大きく3つのタイプに分けられます。
薬の成分名(製品名):デュピルマブ(デュピクセント®)
かゆみ・炎症・バリア機能低下のもとになるIL-4、IL-13を同時に抑えるタイプです。アトピー性皮膚炎の幅広い症状にバランスよく作用するとされています。
生後6ヵ月のお子さんから使用することができます。

薬の成分名(製品名):トラロキヌマブ(アドトラーザ®)、レブリキズマブ(イブグリース®)
慢性的な炎症に深く関わるIL-13を狙って抑えるタイプです。皮膚の炎症や乾燥にじっくり作用することが期待できます。
顔まわりの症状が気になる方に使用が検討されることもあります。また、論文データやこれまでの治療経験から、副作用である結膜炎が比較的少ない印象があります。
現在2つの薬があり、投与の頻度や対象年齢が異なります。
トラロキヌマブ:15歳以上が対象、基本的に2週間に1回の投与
レブリキズマブ:12歳以上かつ40kg以上が対象、症状が落ち着いた維持期は4週間に1回の投与に変更できる

薬の成分名(製品名):ネモリズマブ(ミチーガ®)
かゆみのメッセージを伝えるIL-31をピンポイントで抑えるタイプです。
「夜眠れないほどかゆい」「掻き壊しを繰り返してしまう」といった、強いかゆみでお悩みの方の選択肢となります。
6歳以上が対象となります。
湿疹や赤みを抑える効果は限定的とされるため、塗り薬や他の治療と組み合わせて使うことが多いでしょう。

それぞれの注射薬では下記のような副作用が報告されています。
副作用は必ず起こるというものではありませんが、治療中に体調の変化を感じたら、できるだけ早く医師、看護師または薬剤師にご相談ください。
デュピルマブ(デュピクセント®)
ふらつき感、息苦しさ、皮膚のかゆみや赤みなど
発疹、むくみなど
結膜炎(目の赤み、かゆみ)
トラロキヌマブ(アドトラーザ®)
かゆみ、唇のまわりの腫れ、発汗など
風邪のような症状
結膜炎(目の赤み、かゆみ)
レブリキズマブ(イブグリース®)
アナフィラキシー(動悸、息苦しさなど)
結膜炎(目やまぶたの赤み、腫れなど)
注射部位の腫れ、かゆみなど
ネモリズマブ(ミチーガ®)
風邪のような症状
皮膚症状の悪化
めまい、吐き気、息苦しさなど

治療を続けるなかで「2週間に1回の通院が負担…」と感じる場合は、医師の指導を受けたうえで自宅での自己注射に切り替えることもできます。
治療の目標や見通し、治療に長期的な不安を感じているときはぜひお気軽にご相談ください。
注射の費用は、製剤の種類・体重・投与間隔によって変動しますが、自己負担は3割負担で月2〜6万円程度が目安とされています。
「注射を試してみたいけど、費用が心配」――そんな声も少なくありません。
自己負担額が高額になる場合には、高額療養費制度・こども医療費助成制度・医療費控除など、利用できる制度があります。
また、加入している健保組合によっては、付加給付制度がある場合も。
実質の自己負担が月額2〜2.5万円程度で済むこともあるため、該当する可能性がある方は、医療機関のソーシャルワーカーや、保険加入先にご相談いただくことをおすすめします。
「自分はいくらになるのか?」など具体的なシミュレーションも当院で行えますので、お気軽にお声かけください。
注射治療は決して「魔法のお薬」ではありません。症状をコントロールしながら日常生活を快適に過ごせる状態を目指すための治療法です。
それでも、これまでの治療で十分に改善しなかった方にとっては、「皮膚状態を良い状態に保ち、日常生活をより明るく過ごすための選択肢」となり得ます。
症状や治療効果には個人差があるため、ご自身に合った治療を選ぶには医師との十分な相談が大切です。
当院は、ご紹介したすべてのタイプの生物学的製剤に対応しております。
「自分にも合うのかな?」「費用はどれくらい?」――どんな小さなご相談でも構いません。
ひとりで抱え込まず、まずはお話を聞かせてください。
あなたに合った治療を一緒に考えていきましょう。
当院のアトピー治療についてはこちらをご覧ください。
[注射治療を受けられる医療機関について]
アトピー性皮膚炎の注射治療(生物学的製剤)は、他の薬とはちがうアプローチで効果が期待できる薬ですが、処方できる医療機関・医師には以下のような条件があり、専門的な知識と経験が求められます。
【厚生労働省「最適使用推進ガイドライン」で定められている条件(概要)】
アトピー性皮膚炎の診療に十分な臨床経験を持つ医師が在籍していること
副作用が起きた際に適切に対応できる体制が整っていること
製造販売後の安全性調査に協力できる体制であること
治療を検討される際は、お近くの医療機関で注射製剤の取り扱いがあるかを事前に確認することをおすすめします。
【参考文献】
[1] 日本皮膚科学会他 編: アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024, 日本皮膚科学会雑誌. 2024; 134(11): 2741-2843
[https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/ADGL2024.pdf(2026年5月閲覧)]
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